選(SEN)

情報処理追跡システムの開発

1.経緯 | 2.開発上の問題点 | 3.システムの概要 | 4.今までに行われた6つの研究

4.今までに行われた6つの研究

ここでは実際に行われた6つの主な研究を紹介して、公開された論文を元にしてこのシステムで何ができるのかを解説します。

1.サービス製品の評価実験(山本昭二)

本研究では、サービス製品とモノ製品についての消費者の情報取得の違いについて検討した。選を利用した実験を行い。IDB法を使ってノートPC、カップラーメン、海外旅行、宅配便について実験を行い結果の比較を行った。従来のサービス製品の評価における手がかりモデルだけでは無く、消費者側の要因として対象に対して消費者が抱く感情の違いによってどの様な処理がされるのかという「制御焦点」モデルの仮説も利用して実験を行った。

結果としてサービスの経験財としての特徴から情報の取得率が高まると自信が高まるという効果が見られた。また、ブランド数が増加すると消費者は考慮するブランドを減少させるという結果となり、仮説通りの実験結果となった。

サービス製品の評価過程の追跡 第61回日本商業学会全国大会

2.医療機関のホームページ評価実験(森藤ちひろ)

本研究の目的は、実験サイトのログデータとアンケート調査によって消費者の探索行動と態度を測定し、ホームページの評価と実際の医療機関への評価、受診意図の関係を明らかにすることである。

実験サイトは、テキスト情報の多いサイトXと写真情報の多いサイトY、テキストと写真情報が混在するサイトZを用いた。トップページ、院長・スタッフ紹介、診療案内の記憶とHPの理解度、医療機関の評価、受診意図を検討した。調査対象者は、マーケティングリサーチ会社 のモニター603名(30~87歳)とし、インターネット利用時間が多い人と少ない人、慢性疾患があり通院している人とそれ以外が半数ずつとなるように設定した。

本研究では以下の3点が明らかになった。第一に、医療機関ホームページでは閲覧時間よりも移動距離が記憶に影響しており、テキストを中心とした主観情報よりも写真などの客観情報の方が記憶やホームページの理解度に効果があった。第二に、ホームページの評価と実際の医療機関の評価、受診意図は密接に関係していた。第三に、記憶は、消費者の健康意識、治療意欲の影響を受けていた。以上により、医療機関ホームページでの患者の健康意識や治療意欲の喚起がホームページの記憶を向上させ、受診意図に結びつくと考えられる。

医療機関ホームページの消費者の態度に与える影響:実験サイトにおける消費者のログデータ分析」,『公益財団法人吉田秀雄記念事業財団平成22年度(第44次)助成研究集,197-218,2011.

3.医科大学及び大学病院の評価実験(森藤ちひろ)

本研究の目的は、同一非営利組織によって運営される異なる事業の統合的Webマーケティング戦略を考察することである。本稿では私立医学部と医学部附属病院を事例とし、医学部への進学意向のある子供を持つ親を対象に実験用医学部Websiteに対する態度とブランド・エクイティの影響を調査した。

若年層を対象とする医学部と難治性患者を対象とする附属病院では顧客が異なるが、調査の結果、両者の評価には相関があり、子供の大学選択に関する家族内意思決定には大学病院に対する評価が影響していた。特に、一般家庭は医師のいる家庭よりも広く深い情報探索を行っており、附属病院への評価が大学の評価に与える影響は、医師のいる家庭より一般家庭において強かった。

私立医学部への進学は医師の子供が多数を占めるが、近年一般家庭の子供が増加している。新市場開拓には、医学部Websiteに効果的に附属病院情報を組み込み、大学と病院両者の評価を高めることが有効と考えられる。

非営利組織のブランド・エクイティに関する実証分析-医療系大学のWebマーケティング戦略に対する消費者の評価-」,『公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究集(要旨)平成24年度(2012年)第46次』,83-94,2014.

4.ホテルの選択実験(国枝よしみ)

本研究の目的は、サービス製品のネット・ショッピングにおける、消費者の購買前と購買後のプロセスに生じる認知と、感情の心理学的経過を探索し、購買によってどのような感情が生起するのかをネット調査及び実験を通して明らかにし、感情の顧客満足や再購買意図への影響を実証した。その方法は、宿泊施設の予約サイトに近い環境を「選-SEN-」に構築し、あらかじめ設定したシナリオに従って製品選別と購買、不購買の反応を行わせ、購買後の感情を計測した(実験1)。次に、Regulatory Focus 理論(Higgins 2002)による消費者の購買、再購買に至るプロセスにおける感情の影響について実験を行った(実験2)。その結果、ホテルに高関与な消費者は、外在的及び内在的手がかりをどちらも活用しており、低関与の消費者よりも多くの情報処理を行っていた。実験2では、Webサイトでサービス製品を購買するとポジティブな感情が生起され、満足、再購買に影響することが検証できた。このことは、ネット・ショッピングにおいてのポジティブな感情を喚起する何らかの戦略が、サービス製品の販売に功を奏することを示唆している。

①「ネット・ショッピングにおけるサービス製品の購買により生起される感情の影響」,『公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究集(要旨)平成24年度(2012年)第46次』,37-55,2014.

②Effects of Emotions on Consumer Behavior during Online Service Purchasing,
http://ertr.tamu.edu/enter-2014-volume-4-research-notes/

5.チョコレートの選択実験(西原彰宏)

本研究では、消費者による製品に対する関与度(水準)とバラエティ・シーキング傾向の差異により、消費者が選択するブランドの数、種類の多さ、選択時に要する時間の差異について明らかにすることを目的としている。

具体的には、「選」にショッピングサイト(下図)を組み込み、消費者にチョコレートの選択・購買課題を複数回課している。どの商品が選択・購買されたか、その順番や、選択・購買に要した時間として滞留時間の他、上下スクロールの回数や移動ピクセルなどのログデータを取得している。

6.禁煙サイトの評価実験(浦田 剛)

薬事法により、医療用医薬品の情報提供は医療従事者に限定されています。医療サービスの品質評価の過程における対患者のコミュニケーションの役割を(製品名の記載できない)患者向けサイトを通じて調査することで、患者の医療用医薬品(禁煙補助剤)に対する知覚品質の形成を確認しました。この調査では実際のサイトを訪れた被験者の評価を収集しました。